集塵機付きバフモーター(集塵バッファー)に要求される条件は次の7項目に整理できるでしょう。
1.バフの大きさが製品(この場合はジュエリー)を掛けるのにふさわしいこと。
2.補塵能力が十分であること。
3.外部、特に顔面に粉塵が流れないこと
4.作業性が優れていること
5.集塵紛の回収を含め、メインテナンスが容易であること。
6. エネルギーコストがかからないこと。
7.場所を取らないこと。
8.人と製品に対する安全性が高いこと
以上のうちで明らかに大型の集塵バッファーがすぐれているのは4番と6番でしょう。一方7番は明らかに劣っています。これらの項目は使用条件により勘案するほかありません。
次にもっとも本質的で重要と考えられる最初の1〜3項を検討してみたいと思います。
1.ジュエリー製品のように小さくて壊れやすいものに20cm以上のバフを使うのにはかなり危険が伴います。それにも関わらず、効率的に美しく仕上げるにはこの程度の強力なバフが必要だと考えている人もいますが、それほどの強力なバフは必要ないと考えている人もいます。確かに大きなバフを使うと軽く当てるだけですぐに滑らかに仕上がります。小さなバフではそうは行かないのでしょうか。バフが小さくなるにつれて、人は製品を強くバフに当てるようになり勝ちです。それはバフが小さくなるほど強く当てることが可能になるからとも言えます。大きなバフでは製品を強く当てるのは非常に危険ですから、弱く当てざるを得ない。強く当てるのが可能なら、もしバフの掛かりが悪い、遅いと感じると、もっと早く掛けようと思い、多くの人は強く当てるようになります。確かに感覚的には逆に力を弱めることは不自然です。
しかしバフの掛かり具合は感触では捉えられません。
(プラチナのバフがけ)
かなり経験のある人でも不適切な強さで掛けている人は意外と多いのではないかと思います。特にプラチナは金に比べて硬く、掛かりが遅いため、必要以上に強く掛けている人が多い様にです。バフが小さくなると掛かりが悪くなる場合、その原因は強く掛け過ぎているからではないでしょうか。バフを強く当てることによって得られるものは殆どありません。
製品をバフに強く当てると、研磨材(青粉)が瞬時に飛び散ってしまうだけではなく、削る必要の無いような窪みにまで強くバフ布が押し当てられるため、元の凹凸が保存されたまま削られてしまいます。そのためにいつまでたっても仕上がらないのです。むしろ弱めに、物足りないと感じられるくらい軽く当てることによって小さなバフでも早く滑らかに磨くことが出来ます。また、強く当てることによって製品が飛ばされ、破損される危険性が増すことは言うまでもありません。
2.次に集塵能力の問題ですが、現在多く使われている集塵バッファーのフィルターはかなり目が粗く、また構造上多少の隙間があり、粉塵がかなりもれていることは排気孔周辺を見れば分かります。一般的に工業用の集塵機に比べて掃除機のフィルターの方が目が細かいようですが、特に家庭用の掃除機の紙製のフィルターは補塵性に優れています。補塵性、したがって衛生上の面からは家庭用の掃除機が利用できればその方が好ましいと言えます。
3.外部、特に顔面に粉塵が流れないかどうかは構造的な設計に大きく左右されます。バフの回転によって起きる気流を効果的に集塵機の方に誘導するような設計が望ましいことは明らかです。また、自然に落下したり、壁面に付着したりする粉塵は集塵機に誘導する必要はなく、気流に乗っている粉塵のみを吸引することによって効率を高めることが出来ます。この点からは、バッファー組み込みの集塵装置よりも、掃除機を含めた外部の集塵機を利用する方が自由に設計できるのではないかと思われます。
以上の考察から大きなバフは必ずしも必要ではないことが分ります。更に大きなバフにはそれ自体にデメリットもあります。何よりも外周の回転速度が速いために1)研磨剤がすぐに飛び去ってしまい、2)外周に強く大きな気流が発生するために粉塵をより多く飛散させ、3)強く押し当てなくても製品を飛ばす危険性が大きくなります。
結論的に、ジュエリー製品の仕上げ用に関する限り、大きくとも直径18センチまでのバフを使用できれば十分であり、そのバフモーターを収納する集塵機は作業性やエネルギー効率から言えば大きい方が良いのでしょうが、人、製品双方にとっての安全性、その他の制約を考慮すれば、小さくて集塵性能の良い集塵機が出来ればそれなりにメリットがあり、その際、家庭用掃除機は十分に利用できる可能性があることが分かります。家庭用の掃除機はメインテナンスの上でも優れています。ただエネルギー効率の点で劣っていることは確かで、あまり長時間、連続して稼動することには向かない可能性があります。その場合は掃除機ではなく汎用の集塵機を接続することが出来ます。
⇒テスト写真
2001/06/07
Copyright (C) Junichi Tanaka